ブックメーカーの「転がし」は成立するのか — 確率と期待値を全部計算しました

転がしは、当たったときの金額が増えるぶん、成功する確率がそれ以上に小さくなる手法です。1万円を1.90倍で10回連続的中させれば613万円になりますが、10回連続で当たる確率は約0.098%、つまり1,000回に1回です。

期待値で見ると、控除率5%のオッズで10回転がしたときに残るのは元手の59.9%です。回数を増やすほど下がります。上がることはありません。

このページでは、その計算を全部並べます。電卓があれば同じ答えになるように書いてあります。

田村 涼
執筆者:田村 涼
最終更新:
2026年8月13日
坂を転がりながら大きくなり崖から落ちようとしている紙の玉のイラスト

このページの数字について

すべて計算で出しています。使っている前提は2つだけです。

  • オッズは1.90倍(2択で両側1.90倍、控除率5.0%)
  • 真の的中確率は50%(2択で互角の想定)

実際のオッズや的中確率が違えば数字は変わりますが、回数を重ねるほど期待値が下がるという方向は変わりません。控除率がゼロにならない限り、そうなります。

転がしとは何か

勝った資金をそのまま次の賭けに乗せていく方法です。
「1万円を10万円にする」といった目標を、
複数回の的中を連結することで達成しようとします。

複数の試合を1枚にまとめるマルチベット(パーレイ、アキュムレーター)
数学的には同じです。違いは、まとめて賭けるか、1つずつ確定させてから次に賭けるかだけで、
期待値は変わりません。

混同されやすいのがマーチンゲール法ですが、これは別物です。
転がしは勝ったら賭け金を増やす
マーチンゲールは負けたら賭け金を増やす手法です。
後半で比較します

何回で目標に届くのか — 必要回数の表

1.90倍で連続的中したときの倍率です。1.9の累乗を並べただけです。

連続的中 倍率 1万円が 成功確率(50%想定)
1回 1.90倍 19,000円 50%
2回 3.61倍 36,100円 25%
3回 6.86倍 68,600円 12.5%
4回 13.03倍 130,300円 6.25%
5回 24.76倍 247,600円 3.13%
7回 89.39倍 893,900円 0.78%
10回 613.11倍 6,131,100円 0.098%
15回 7,481倍 7,481万円 0.003%

「1万円を10万円に」は4回で届きます。成功確率は16回に1回。
「1万円を100万円に」は8回必要で、確率は256回に1回です。

ここで大事なのは、成功確率が倍率と対称に落ちないことです。
4回で13.03倍になるのに、確率は16分の1(=16倍のうち1回)。
13.03と16の差が、胴元の取り分です。

成功確率と期待値

期待値は「倍率 × 成功確率」で計算できます。
1.90倍・的中率50%なら、1回あたりの期待値は
1.90 × 0.5 = 0.95、つまり95%です。

これをn回続けると、期待値は0.95のn乗になります。

回数 期待値 1万円に対して 失われる期待値
1回 95.0% 9,500円 −500円
3回 85.7% 8,570円 −1,430円
5回 77.4% 7,740円 −2,260円
10回 59.9% 5,990円 −4,010円
20回 35.8% 3,580円 −6,420円

10回転がすということは、
統計的には元手の4割を捨てて挑戦しているということです。
残り6割を宝くじの当選金のように、極端に低い確率の側に集中させています。

転がしの期待値が回数とともに下がることを示す折れ線グラフ
オッズ1.90倍(控除率5.0%)で転がした場合の期待値。10回で59.9%、20回で35.8%まで下がります。上の表と同じ数字をグラフにしたものです(編集部の計算)。

「1回で終わらせたほうがマシ」という結論

表からわかることは単純です。
期待値の観点では、賭ける回数は少ないほどよい
1回だけ賭ければ95%、10回転がせば59.9%。
転がしは期待値を改善する手法ではなく、
期待値を犠牲にして分散(当たり外れの振れ幅)を大きくする手法です。

これは欠点とは限りません。
「少額を、低い確率で大きくしたい」という目的がはっきりしていて、
負けても構わない金額でやるなら、目的と手段は一致しています。
問題なのは、これが「安全に増やす方法」として紹介されていることです。

マーチンゲール法との違い

負けたら賭け金を倍にして、1回勝てば損失を取り戻すという方法です。
転がしとは逆向きですが、結論は同じ場所に着きます。

1,000円から始めて、2.00倍で倍賭けしていった場合です。

連敗数 次の賭け金 ここまでの累計損失 その時点の目標利益
1 2,000円 1,000円 1,000円
3 8,000円 7,000円 1,000円
5 32,000円 31,000円 1,000円
8 256,000円 255,000円 1,000円
10 1,024,000円 1,023,000円 1,000円

10連敗した時点で、1,000円の利益を得るために102万円を賭ける必要があります。
10連敗する確率は約0.098%——転がしで10連勝する確率とまったく同じです。
低い確率のほうに破滅を置いただけで、期待値は変わりません。

さらに、オッズが1.90倍の場合は倍賭けでは足りません。
1.90倍で取り戻すには賭け金を約2.11倍ずつ増やす必要があり、
上の表よりも早く金額が膨らみます。

サイト側の上限が先に来ます

理論より先に、実務的な壁があります。

  • 最大賭け金の上限 — 市場ごとに上限が設定されています。
    マーチンゲールは数回の連敗で上限に達します。
  • ボーナス利用時の上限はさらに低い
    カジノスカイの登録ボーナスの規約では、最大賭け金がカジノ675円・
    スポーツ7,500円です。この状態でマーチンゲールは物理的に成立しません。
  • オッズの変動 — 転がしの途中で目当てのオッズが
    1.90倍から1.75倍に下がっていれば、計画そのものが崩れます。
  • 資金の上限 — 手元の資金が尽きたら、
    確率が残っていても続けられません。これが「破産確率」です。

ボーナスの賭け条件を転がしで消化する話

「賭け条件20倍を、転がしで一気に消化する」という説明を見かけます。
賭け条件は賭けた総額で数えるため、
転がしで金額が増えれば消化は速く進みます。ここまでは正しいです。

ただし、実際には次の制約が同時にかかります。

  • 最低オッズの指定 — カジノスカイのボーナス規約では
    スポーツは1.8以上でないと消化に算入されません
  • 消化率 — カジノでは、スロット100%に対して
    バカラ5%といった差があります
  • 出金上限 — 同じ規約で、出金上限は15,000円です
  • 有効期限 — 3日

この4つが同時にかかると、
賭け条件40倍をバカラ(消化率5%)で消化する場合、
必要な賭け総額は621,600円になります。
出金できるのは最大15,000円です。
条件の詳細はボーナスのページにまとめています。

それでも使う場合の考え方

期待値がマイナスであることを理解したうえで、
娯楽として使う場合に、最低限そろえておきたい前提です。

  1. 元手は失っていい金額に限定する。
    転がしは、その元手がゼロになる確率のほうが高い手法です。
  2. 回数を先に決める。
    「3回で終わり」と決めて、当たっても続けない。
    続けるほど期待値が下がるのは表のとおりです。
  3. 負けた後に取り返そうとしない。
    それはマーチンゲールであり、上の表の道です。
  4. 「勝率が高いオッズ」を選んでも期待値は改善しない。
    1.20倍のような低オッズを重ねても、控除率は同じようにかかります。

日本の法律上の位置づけ

先に確認しておきたい法律のこと

日本の刑法は、日本国内から賭博を行うことを禁じています(第185条・第186条)。警察庁は「海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博を行うことは犯罪です」と明言しており、2025年6月の通達でスポーツベッティングも対象に含めています。2025年9月25日からは、ギャンブル等依存症対策基本法 第九条の二により、こうしたサイトを国内の不特定の人に提示すること、および誘導する情報を発信することも禁止されています。

このページは、実際に何が起きているのかを事実として整理したものです。詳しくはブックメーカーと法律・税金のページを先にお読みください。

手法の名前が何であれ、日本国内から海外サイトに賭ける行為は
刑法第185条の賭博罪にあたります。
期待値・違法性・税金の詳細は
ブックメーカーと法律・税金のページにまとめています。

賭ける前に知っておいてほしいこと

ブックメーカーの利用は20歳からです。賭けたお金は戻ってこないことがある、というより、長く続ければ手元から減っていくのが仕組み上の前提です。生活費や借入金を原資にしないこと、「取り返す」ために賭け金を上げないこと、月ごとの上限を先に決めておくことをおすすめします。

ご本人やご家族が、賭けごとをやめたくてもやめられない状態にある場合は、お住まいの都道府県にある精神保健福祉センターが公的な相談窓口です。民間では全国ギャンブル依存症家族の会(090-6737-8665)、ギャマノン(03-6659-4879)があります。厚生労働省の依存症対策ポータルに、相談先の一覧がまとまっています。

よくある質問(FAQ)

1.90倍で4回連続的中すれば13.03倍になり、130,300円になります。4回連続で当たる確率は、2択で互角と仮定すると6.25%(16回に1回)です。期待値は元手の81.5%です。

期待値の観点では、回数は少ないほど有利です。1回なら95%、10回なら59.9%まで下がります。転がしは期待値を上げる手法ではなく、期待値を犠牲にして当たり外れの振れ幅を大きくする手法です。

安全ではありません。1,000円から倍賭けを続けると、10連敗した時点で1,000円の利益のために1,024,000円を賭けることになります。10連敗する確率は約0.098%で、転がしで10連勝する確率と同じです。破滅を低確率の側に移しただけで、期待値は変わりません。

1.20倍のような低オッズでも、オッズには同じように胴元の取り分が含まれています。的中率は上がりますが、1回あたりの期待値がマイナスである点は変わらず、回数を重ねれば同じように減っていきます。

賭け条件は賭けた総額で数えるため、金額が増えれば消化は速く進みます。ただし最低オッズの指定、ゲームごとの消化率、出金上限、有効期限が同時にかかります。カジノスカイの例では、賭け条件40倍をバカラ(消化率5%)で消化すると621,600円の賭けが必要で、出金上限は15,000円です。

田村 涼
田村 涼大相撲・プロ野球・競馬・競艇・eスポーツ・スポーツベッティング全般

大相撲、プロ野球、競馬、競艇、eスポーツを中心に記事を書いています。各サイトのスポーツ一覧を実際に開き、その時点で賭けられる競技と賭け方の種類を数えて記録します。一覧に出ていない競技を「対応」と書かないこと、確認した日付を必ず添えることを守っています。

海外の記事をそのまま訳すのではなく、日本のファンが実際に賭けたい競技から逆算して構成します。NPBの12回引き分けが海外向けの賭け方でどう精算されるか、といった論点は、英語の記事を訳しているかぎり出てきません。

2026年8月時点で未実施:各サイトのオッズ水準(マージン)の実測。同じ試合の同じ賭け方を横並びで比べるには口座が必要なため、まだできていません。実施でき次第、日付を入れてこのページと該当記事に追記します。

再確認の予定:大相撲の取り扱いは、場所中でないと一覧に出ない可能性があります。秋場所初日の2026年9月13日に7サイトを開き直し、結果を相撲の記事に追記します。

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監修: 佐藤 健一